タブラ奏者きゅうりの修行日記

毎年訪れるインド、日本他諸外国での活動。師匠チョーさんとの涙あり笑いありの修行日記です。

シタール奏者ヨシダダイキチが語る「タブラ奏者アルナングシュ・チョウドリィ」の魅力

今回の来日公演でもシタールを演奏する ヨシダダイキチさんに、アルナングシュ・ チョウドリィ(通称チョーさん)の魅力について聞きました。

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<俺が知り合う10年前からチョーさんと一緒に活動していて、ずばりチョーさんのタブラの魅力は何ですか?>
まず、タブラの音が非常にクリアーで、リズムが超タイト。インドでも、あそこまで透明感のあるトーンやコントラストを表現できるタブラ奏者は、なかなかいない!

それから、音楽の流れを読む力、音楽を生み出す力が非常に優れてる。

ちょっとしたシタールのフレーズやノリの変化に素早く反応してくれるので、常に音楽全体に色んな情景や表情が生まれ続ける。

さらに、タブラ・フレーズに歌心や遊び心、その瞬間に生まれて来る音に果敢に挑戦する姿勢があって、どうしても形式的な音楽になりがちなインド音楽を、フレッシュで華やかな音楽に変えていける。


<それが、スバリ!チョーさんの情熱?>
少し回りくどく説明すると、インド音楽は、伝統・古典音楽なんで「形式美」というのがある。形式の中には、古代から蓄積されたミュージシャン達の知恵や技術、物語が詰まっていて、まるで宝の山の様で素晴らしいが、

形式だけに囚われると、まるで過去の亡霊に取り憑かれた型苦しい音楽になってしまう。

だから、形式の中に「即興」というコンセプトが組み込まれて、それが重要な音楽の軸になってる。 現代でいうとジャズの様なもの。

世界中の古典芸能や古典音楽は、いつの間にか即興がなくなり、形式の保存になってしまいがちだけど、インド音楽は、今だに「即興」が重要視されるから、常に「今この瞬間」を意識せざるえないし、演奏者の直感やイマジネーションも常に試される。

チョーさんは、今この瞬間の音、直感というのを、勇気を持って、表現しようと挑戦できる本物のミュージシャンだし、そこが認められてる!


<とてつもなく狭き門を突破し、今では、インド古典の最前線トップレベルで活躍するチョーさんですが、出会った頃の頃はどんな感じでしたか?>
12年前の2006年、僕が師匠Ud・シュジャート・ カーンに習い始めた最初の年、師匠のコンサートでタブラを演奏してるチョーさんに出会った。 終演後、チョーさんと「家にシタールもって遊びに来い。練習しよう!」って話になって、

あの頃は、狭いアパートで、奥さんと産まれたばかりの娘との3人暮らしの30代、、、髪の毛もフサフサ、

インドは、3~10月くらいまで、気温50度の灼熱な上、雨季になると湿度120%みたいになるんで、コンサートは、 めっきり少なくなる。それで有名なミュージシャンは、海外のコンサートツアーに出る。

当時のチョーさんは、まだ今の様に、頻繁に巨匠との海外ツアーはなかったんで、チョーさんの家に遊びにいった後、奥さんのかなり強い勧めもあったようで「日本でコンサートできないか?」というメール、電話での猛烈なアピール、

実際、それくらいじゃないと、厳しいインド古典の世界と厳しいインド気候の中、一家を養っていけないしね、

 

<それから、何度も日本に呼んで公演してたんですね>
そう、それから、ほぼ毎年、時には年2回、チョーさんを呼んで日本中ツアーした。でも日本で、インド古典とか、正直、ちゃんとした仕事にならない。

だから、毎回、1回のツアーで、東北から九州まで20〜25本のライブをブッキングして、何千kmも車を運転して回って、何とか、チョーさんがお金持って帰れるようにしてた。

だから、これまでチョーさんとは100本以上のライブをしたはず、


<それは、今の演奏にも影響してますか?>
やっぱり、なんでも、凄いミュージシャンに挑戦したり、良いミュージシャンと一緒に演奏するのが、一番、音楽が理解できるし、自然に、演奏も上手くもなると思う。

Ud・シュジャート・カーンに習いに行くのも、単に知識や技術ではなく、グラミー賞にノミネートされたり、世界中の著名なホールで何千、何万人もの聴衆を歓喜させるレベルのミュージシャンに、レッスンという形であっても1対1で向き合うと、やっぱり何もかも全然違ってくる。


<今年、ダイキチさんのレッスンを見学に行って、何万人もの聴衆を虜にするUd・シュジャート・カーンのシタールを目と鼻の先で聞いて、マジでブッ飛ばされました>
チョーさんは、その師匠シュジャート・カーンと演奏するくらいのレベル、今は偉くなったけど、当初は若いから無名、でも、当時から腕は一流、 そんなタブラ奏者と100本以上ライブしたら、もう理屈ではな く、体が覚えていく。 演奏だけでなく、何百時間の移動も一緒にいるし。

<今回の来日公演に関して何か一言>
最近、チョーさんとも、よくメールでもやり取りするけど、幼馴染でもないし、日本とインドで住んでる場所も違うのに、12年も良い関係を続けて、今でも一緒にライブしてるのは、不思議な巡り合わせとしか言いようがない。

チョーさんも、熱血の若手タブラ奏者から、今は、凄いキャリアを積んだ中堅のタブラ奏者、、、

実際、演奏してるのは、シタールとタブラを使ってインド音楽のフォームでも、もはや、楽器や形式、国や人種を超えた繋がりを感じる。

<その辺り、俺もかなり感じ始めました。不思議な出会いというか縁というか>
伝統音楽とか伝承音楽いうのは、繋がり続けてるから、時代によって環境が変わっても繋がりが途切れないから、その繋がっていく力がパワフルだから伝承される音楽になっていく。

知識や技術も大事だけれど、その繋がる磁力、出会い、縁が、やっぱり本質だと思う。

知識や技術は、今の時代、何年もインドに通って師弟の信頼関係を築かなくても、YouTubeを開けば、シタール弾き方、インド音楽の解説、巨匠の音源、、、なんでもアップされてるし、楽器も1クリックすればネット通販で買える。

だから、知識や技術は、実際、YouTubeを見てるだけでも、器用な人なら、ある程度は習得できる。

でも、それが「伝承の音楽か?伝統か?」というと、やっぱり、そこには、生身の人間同士が繋がって生まれるドラマがない、、、。

知識や技術は道具であって、それらは、時代の環境でも変化していく。実際、マイクやスピーカーなどの音響装置がなかった時代と現代では演奏技術も変化してる。

具体的には、音響装置が生まれ、より繊細な奏法が生まれ、大観衆を魅了する多様なメロディとリズムのアンサンブルが生まれて、、、とか、、

でも、長い時間をかけて、いろんな経験を共有して、より深い縁が生まれ、磁力が増し、伝承が始まり、人間同士のドラマが音楽に変わっていく、、そのプロセスは変わらない。

そこは便利なテクノロジーで合理化できない。。

チョーさんとは、そういう生身の人間同士の繋がりから生まれる音楽が熟成し始めてる。


公演まで2週間を切りました!少しでもご興味ある方は、ぜひこの機会をお見逃しないようお願いいたします!

<アルナングシュ・チョウドリィ来日公演>
6月2日(土)18:00:錦糸町:SASAYA CAFE
6月6日(水)19:00:早稲田:The Concert of Tokyo Concerts
6月8日(金)18:30:吉祥寺:武蔵野公会堂
6月9日(土)17:00:大磯:今古今

公演の詳細・ご予約はオフィシャルサイトorきゅうりまで>
http://kyuri-tabla.wixsite.com/japantour
タブラきゅうりで検索できます

J-WAVEラジオ出演中>
サラーム海上「ORIENTAL MUSIC SHOW」
http://www.j-wave.co.jp/original/dc3/

5月25日(金)ヨシダダイキチ×岡部洋一(ROVOetc)×きゅうり@下北沢サーカス
https://www.facebook.com/events/199443350673206

5月26日(土)インド音楽を理屈抜きで楽しむためのレクチャー&ライブ
ヨシダダイキチ×きゅうり
https://www.facebook.com/events/475706852847453/